フィージビリティ・スタディ(Feasibility Study)  



 フィージビリティスタディとは、実現の可能性を探るための立案前検討を意味します。
 設計を依頼されて初めて会う席で、私はまず、クライアント(お客様)に「自己紹介」をして頂きます(笑)。これは日常生活上ごく当たり前の行為なのですが、その会話のニュアンスからプライオリティ(何が大切なものと考えているのか・・・その優先順位)を伺い知る事ができるのです。メール、ブログでは説明しきれていない情感を知るために・・・
 次に、「どういう住宅をお望みですか?」と伺います。言葉は人間の表現行為の中で最も感情を込める事のできるものです。端々にクライアントの希望というものがハッキリあらわれます。希望とともに迷いや矛盾もありますが(笑)、それは設計者の提案・解決でスッキリさせていくものです。
 ですが、この質問は、お客様をたいへん悩ませるもののようです。「う〜ん・・・」と一息おいた後、遠慮を含みがちに出てくる「希望」とは、「のびのびと暮らしたい」、「家族をさりげなく感じながら暮らしたい」など、デザイナーが自作を語る以上に抽象的な表現が多いのです(笑)。たしかに、自分がお客様になった場合、「プロ相手に、専門用語も知らない身で何を伝えればいいのか?」と、考え込むこと必至の問いかけです。たいへん答えにくい質問だと思います。逆に、ソファ・チェア・テーブルなどの家具系や、キッチン・オール電化・床暖房・浴室暖房乾燥機など住設・家電系の希望は、具体的なものになりがちです。皆さん、どうやら以前から「欲しい!」と狙いを定めているようで、外国ブランドのメーカー品を指定される場合が増えてきました(笑)。ゆえに、私は第一に発せられる「お客様の自己紹介」を最も大事な設計要素と考え、それをデザインの背骨に据えて計画を進めます。私に設計を頼んでみようと考える方へ・・・自己紹介 宜しくお願い致します(笑)。
 上記のイメージを大切にして練られるのがフィージビリティスタディです。自己紹介で得られたキーワードを空間へと昇華させるために、各室・屋外空間との様々な連携の可能性を探るのです。
これをわかりやすく図にしたものが第1弾のダイアグラムとして提示されます。言わば、胸ふくらむ計画案実現のための「アタマとココロのウォーミングアップ」ですね。

(文:久保田正一

■図:フィージビリティスタディから導き出されたダイアグラム(house-yy

house-yy広島県広島市 設計:Integrated Network kc2 施工:アサヒ装建

house-yyで使用された主な住宅設備機器
キッチン:松下電工  家具:アクタス  照明器具:コイズミ照明  衛生機器:INAX  エアコン:ダイキン工業