4章 地業工事


 今回は地業工事にまつわる話です。「地業」とは耳慣れない言葉でしょうが、「家を建てるのに相応しい地盤かどうか?」、「地盤が弱い場合、どのような対処が必要か?」という疑問を解決してゆくための工事 すなわち「地盤調査」と「地盤補強工事」です。こう言い換えれば ピンときますよね?



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 では、まず地盤調査から説明してゆきましょう。一般的な戸建住宅を建設する際の地盤調査としては「ボーリング調査」と「スウェーデン式サウンディング調査」という2種類の調査が広く知られます。前者は、規定の錘(おもり)を落下させて鋼管を打ち込むもので、1m打ち込むための必要打撃回数を確認する事で地盤強度を調査するものです。一方、後者は先端がドリル状の棒鋼を1mねじ込むために必要な回転数によって地盤強度を割り出すものです。また、「ボーリング調査」はサンプル採取が可能で深い地盤まで調査可能な事から、高層建築の調査に向いており、「スウェーデン式サウンディング調査」は試験騒音が少なく機器が小さいため狭い敷地でも調査が容易である事と試験費用が前者に比べて安価なため木造住宅の調査に向いていると言えます。


 これらの調査で得られたデータに加え、地盤の地域特性、近隣データなどを加味しながら基礎の検討がなされます。



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 調査の結果、地盤強度に問題がないようならば現状敷地を整地の上で基礎工事を進めますが、地盤の強度が不足気味の場合は地盤補強工事から入ります。


 地盤補強が必要な地盤にはいくつかのパターンがあります。


1)表層から2〜6m程が柔らかく、それより深い部分は密実な地盤
2)表層から数十mまで ずっと柔らかい地盤
3)表層はしっかりしているが、地下の水位が高い地盤
4)表層から数m柔らかく、それ以降はしっかりしているがその層が傾斜している地盤


 では、このような地盤には 一体どのように対処すればよいのでしょう。


 1)の場合、そのまま建物を載せると必ず沈下します。軟弱層が2m程度の場合にはセメント系の固化剤を土に混ぜて地盤そのものを固める「地盤改良」を行った上で、基礎工事をおこないます。また、軟弱層が2m以上続く場合には安定地盤に達する長さの鋼管杭を打ち込み、その上に基礎を載せます。


 2)の場合、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層ビル、マンションと 低層の木造住宅では、その処方が異なります。大規模建築の場合は強固な支持地盤まで確実にコンクリートまたは鋼管の杭を打ち込みます。一方、木造住宅は建物重量や安全性、コストを総合的に考え、鋼管杭あるいは柱状改良が一般的です。「柱状改良」とは直径60cm程の大きさに掘られた穴にコンクリートを流し込んで柱状に固める施工法です。鋼管杭、柱状改良ともに建物荷重を考えてバランスよく配置します。


 3)の場合、地盤データ上は弱くはないのですが、建物が存在する事による長期的な荷重や地震などによる短期的な荷重によって土中の水分が絞り出され、地盤が沈下してしまう事があります。ニュースでよく耳にする液状化現象が これに当たります。このような場所では、水を含む地盤に荷重をのせないようにすべきです。すなわち地下水より下の地盤で建物を支持するよう杭を打ち込むのです。


 最後に4)ですが、この種の地盤は元々は谷地だったところに土砂が堆積した場所であると考えられるため、地震時や豪雨の際の土砂崩れや地滑りが起こりやすいものです。この場合、表層地盤に建物荷重をかけないよう 支持層(元々の谷地の層)まで杭を打ち込む必要があります。


 これらの方法を用いて、建設しても大丈夫な地盤を用意した上で、初めて基礎工事に着手できるのです。


 なお、最近は地盤に関する保証制度が確立されています。保証協会に加入している地業工事業者もしくは自社保証を有する業者のもとで地盤調査と地盤補強の工事を行なった場合、地盤に対して複数年の保証と数千万円の保証が受けられます。末永く安心して生活ができるように、地盤も保証もしっかりとした上で建物を建ててゆく事が安心と快適な生活への第一歩であると、われわれ久保田建設株式会社は考えます。


■写真上:ボーリング調査(左)とスウェーデン式サウンディング調査(右)


■写真下:鋼管杭(左)と柱状改良(右)



(文:那須啓一郎


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今回も お読みいただき ありがとうございました。