未来思考 伊豆 〜 時代の贈り物


 先週末、所用で熱海から中伊豆方面をまわりました。静岡県内とはいえ伊豆方面へはなかなか足をのばせないもので、私にとっては5年ぶりの訪問でした(前回は中学の同窓生との温泉旅行です=笑)。今回は、時間をとって地元の方とじっくりコミュニケーションがとれた事で、そこに住まう方々の暮らし・文化・建築形態の特徴を感じとる事ができました。中でも気になったのが、時代が我々に残してくれた 3つの「カタチ」です。


(1)西熱海ホテル

 西武グループが所有し、プリンスホテル系列に属していた「西熱海ホテル」(1960年に本館開業)でしたが・・・ニュースで報じられているとおり 既に解体が始まっています。写真はJR東海道線 来宮駅を過ぎ、熱海梅園に向かう車中からのものです。東京出張の際に新幹線の車窓から見ていたシリンダー状の9階建タワー・・・印象的でした。最上層部は既に撤去されています。ゆっくりと・・・しかし着実に工事が進んでいる様子でした。



 営業当時の様子はこちらで見る事ができます。


人気blogランキング 人気blogランキングへ ← こちらから one click !


(2)旧 玄岳ドライブイン

 西熱海ホテルから今が見頃の熱海梅園を通り過ぎ、熱海新道を上って玄岳(くろだけ)ICから伊豆スカイラインに入りました。そのインターチェンジ近くに この建築物は あります。伊豆スカイラインの中でも最も標高の高い位置にあるため、熱海梅園から市街地さらには相模湾までも見とおす事ができる絶好の展望ポイント・・・なのですが・・・今は その役目を終えているようです。もともと1966年に熱海サボテン公園のロープウェイの駅として建てられた鉄筋コンクリート造2階建の施設で、おそらく上階に乗降スペースがあったため、その経路あるいは搬出入ルートとしてスロープが設けられたのだと思われます。現在であればエレベーターやエスカレーターを設置する事で、このようなスロープは不要という想定もできますが・・・時代が求めたカタチと機能が表出しています。



 この施設についての詳報はこちらを御覧下さい。たいへん詳しく調査されています。


にほんブログ村 デザインブログへ デザインブログへ ← 現在の順位は? more click !


(3)函南町のドーム倉庫

 熱海と函南を結ぶ「熱函道路」からの分かれ道・・・酪農王国「オラッチェ」に向かう途中で見つけた農業用倉庫です(おそらく)。まるでバックミンスター・フラーの「ジオテック・ドーム」、「ダイマキシオン・ハウス」を想起させる光景・・・「未来系思考」とされたものが、ヴァナキュラーな風景の中に溶け込んでいる不思議さを感じました。




人気ブログランキング 人気ブログランキング ← and click ! (デザイン)


 この3つの建築物・・・どこか「未来志向の形態」です。日本におけるモダニズム建築隆盛期(1960年代)の記念碑的建築物とも言えましょう(函南のドームは建造年不明ですが=笑)。旧 玄岳ドライブインの屋根はエーロ・サーリネン氏の空港建築や丹下健三氏の東京オリンピック前後の作品を想起させ、黒川紀章氏や菊竹清訓氏などが示したメタボリズム的未来形が現実化された時代に完成したのです。さらに少し視野を広げてみると、この時代はSF映画「宇宙家族ロビンソン」(1965年〜1968年)や「ウルトラマン」(1966年〜1967年)、「ウルトラセブン」(1967年〜1968年)等の空想特撮シリーズが人気を博する時代でもあるのです。言い換えるなら、「1960年代の伊豆エリアの観光開発および建築形式は、未来や宇宙をイメージしつつ同時代性を保有する」という事になります。同時に、自家用車の普及とドライブウェイ等の道路整備が人々の「眼」を動かし、起伏に富んだ地形に沿って大胆なスペクタクルを体感させるという土木、ランドスケープの「仕掛け」がスタートした時代であるとも言えましょう。


 そして・・・当時の未来志向から約40年の間をおいて・・・トレンドが一回りした感がある現在、再び歴史が進みつつある・・・そんな印象があります。インテリアショップで「ミッドセンチュリー・モダン」として1950年代のイームズ・チェア等がもてはやされた事象から「次」を考えた場合、この流れは「あり」だと思われるのです。伊豆エリアの観光資源の再生には絶好の時期ではないか・・・そう思われる週末の視察でした。

→ 続きはコチラへ


(文:久保田正一


■■■
バナーをクリックして頂く事でランキングポイントが加算されるようになっています。よろしければ、1日1クリック 応援の程 宜しくお願い致します。


今回も お読みいただき ありがとうございました