未来志向(終)〜「宙(SORA)」から「空」へ(修善寺)


 先日から書き連ねてきました「伊豆の今」も大詰め(笑)・・・いよいよ最終回です。熱海から伊豆スカイラインを経由して中伊豆を目指しました。目的は中伊豆・修善寺です。中伊豆は東海岸とは趣の異なる風景を見る事ができます。小山が連なる中伊豆は見る者に包まれた安らかな空気を伝えます。視線の先には山の稜線ごしの「空」が・・・。のどかなランドスケープです。一方、われわれ「創る側」の視点からすれば、このような場における風景づくりは、コントロールのよく効いたものになります。手の届く範囲で、しかも住まう方々のコンセンサスが得られれば、借景的な空間を生む事が可能なのです。


 なかでも修善寺温泉は、その典型的なスポットと言えます。私は修善寺を訪れるのは30年ぶりなのですが、有名な「独鈷の湯」と川の流れに沿った宿泊施設の界隈を活かすべく整備された河岸、竹林散策路を見るにつけ、そのスケール感は京都市西部の嵯峨・清滝あたりのイメージを重ね合わせる事ができました。



 周りも薄暗くなってきました。そろそろ場所を移して・・・と、そのような中、閑静で懐かしい雰囲気な旅館街の一角に、ひときわ鮮やかな光を浴びた建築を発見しました。「宙 [SORA] 渡月荘金龍」さん・・・ここが当日の宿泊先でした。もちろん、当日は極上の御料理、心地よい温泉、きめこまかいサービスを頂いたので色々書きたいところですが、まぁここは「建築コラム」なので、話を特化しましょう(笑)。この写真を見て、「おっ?」と思った方・・・建築に興味ある方とお見受けします。そう、いつかどこかで見た事のある・・・と思いつつ、設計者がどなたであるかを知らないまま来てしまいました。価格とサービス内容のリサーチに気をとられ、ちょっと油断していたようです(笑)。



 食事の際、女将直々の御挨拶を頂きました。もちろん、料理や温泉の事も聞きたいのですが、話をそれとなく建物の話に向けると・・・建築を富永譲氏に、インテリアを辻村久信氏に設計をお願いされたとの事・・・そこで、「なぁるほど!」となるわけです。空間のあり方が、ある流れを汲むものであると・・・。


 そのイメージは、ひとつの住宅作品によってもたらされるものです・・・「スカイハウス」・・・1958年に発表されたこの住宅は菊竹氏の自邸でもあり、大胆なピロティ形式をとる事で知られます。ピロティとは建物を高い位置に支え、地上面(通常の1階に相当する部分)の全部または一部を開けてつくる空間のことを言い、ル・コルビュジェの「ユニテ・ダビタシオン」、丹下健三氏の「広島平和資料館」などにも見られる近代建築に特徴をもたらした空間構成要素です。この「持ち上げられた空間」は重力との関係性を提起し、それは地面からの離陸、海上居住の試行、宇宙への飛翔へとイメージを広げてゆく契機となりました。まさにこれは、私が先日より記してきた伊豆エリアの60年代未来志向を予見するものであり、現代においてそのイメージが再び示されたこの状況は、まさに次の展開をいちはやく求める志のあらわれとは言えましょう。


「宙(SORA)」・・・文字通り 修善寺の「空」に浮かび上がるものでした。月が放つ光と響きあいながら・・・


(文:久保田正一



■参考URL■

宙 [SORA] 渡月荘金龍 http://www.kinryu.net/sora/

富永譲+フォルムシステム http://www.formsystem.co.jp/

有限会社ムーンバランス http://www.tsujimura-hisanobu.com/jp/

菊竹清訓建築設計事務所 http://www.kikutake.co.jp/

口コミ宿マップ http://ymap.info/


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今回も お読みいただき ありがとうございました