モノクローム&コミュニケーション


 手元にDVDが届きました。「コーヒー&シガレッツ」 COFFEE AND CIGARETTES ・・・2003年のアメリカ映画です。監督・脚本はジム・ジャームッシュ・・・そう、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 Stranger Than Paradise (1984 カンヌ国際映画祭カメラ・ドール)、「ダウン・バイ・ロー」 Down by Law (1986) 、「ミステリー・トレイン」 Mystery Train (1989 カンヌ国際映画祭芸術貢献賞)、「ナイト・オン・ザ・プラネット」 Night on Earth (1991)などの話題作で知られる人物です。



 映像は全編モノクロ、音楽は各シーンごと軽く流れる小粋なものです。一方、出演者は豪華絢爛・・・ロベルト・ベニーニイギー・ポップトム・ウェイツビル・マーレイ・・・実名のまま登場する俳優、ミュージシャンたちがコーヒーを飲み、煙草をくゆらせながら作り出す空間は、まさに「日常の風景」です。ジャームッシュといえば、われわれ1960年代前後に生まれたロック好きから見て「粋な兄貴分」といったスタンスで人気を誇る映画監督ですが(笑)、彼の作品に共通して感じられるのは、大して作りこまない(作りこんだように見せない)・・・そんなシーンの連続だという事です。



 「コーヒー&シガレッツ」では、そのシンプルさが更に一歩 おし進められています。ミニマルな状況表現としてのモノクロ画像採用とカメラワークの簡素化が新鮮味を与え、またコーヒーカップでの「乾杯」やチェッカー柄テーブルを真上から撮影する事で各ストーリーの同期性が表現されています。



 これら「仕掛け」について、ジャームッシュ氏は気負うことなく「ちょっとした事」として受け流してみせます。作り手であれば作品のコンセプトについて多弁になりがちですが、ここではパーソナリティの絡み合い、コミュニケーションの関係性にウェイトが置かれているのです。この計画的な「作為なき情景」は、さりげない生活空間における人間の行為を際立たせるのに一役買っています。こんな空間、こんな風景・・・あなたも街角のカフェで体験しているのではないでしょうか。違うのは「演者」・・・「自分磨き」が文化・作品となり、カフェにおける食器・小物・インテリアや建築デザイン さらには街の風景までも変えてゆくのかもしれません。ここまでゆくと都市計画です(笑)。


コーヒー&シガレッツ [DVD]

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 「コーヒー&シガレッツ」・・・これをショートコメディと見るべきかインターナショナルな笑いと見るべきか否か・・・様々な論点はありますが、そんな勘繰りをものともせずにジム・ジャームッシュは撮り続けています。そんな中、思い出した事が1点・・・かつて「ナイト・オン・ザ・プラネット」を見た時の私はスモーカーでした。今は禁煙して5年・・・いや、また吸いたいとは思いませんが・・・せめてコーヒーを1杯・・・(笑)。


(文:久保田正一


■参考URL■

「COFFEE AND CIGARETTES」 http://coffeeandcigarettesmovie.com/
コーヒー&シガレッツ」(日本版) http://coffee-c.com/



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今回も お読みいただき ありがとうございました