9章「防水工事」


 今回は防水工事について お話をさせて頂きます。建築における防水工事には、降雨からの雨漏りを防ぐ外部防水工事と 建物内の設備機器等からの漏水を防ぐ内部防水工事が あります。また、外部・内部とも その箇所や形状に合わせた工法があり、一口に防水工事といっても 内容は多岐にわたります。


 まず、外部については住宅の場合、屋根・窓まわり・換気扇まわり・エアコン配管まわり・ベランダ・地下室その他外壁に取り付けた照明・ポストまわり等に防水工事が必要になります。また、内部については浴室内とその周囲・キッチンや洗面化粧台等の水廻り機器まわりが防水工事箇所になります。近年、採光・通風のため2階や3階に水廻りの部屋を計画する住宅が多いですが、特に このような場合こそ下階に水漏れを起こさないようにしっかりした防水工事をする必要があります。


 防水工事には、(1)溶融したアスファルトでシートをはりつけて防水するアスファルト防止(施工中、臭いや煙を発生させるため最近住宅ではあまり使用していません)、(2)シート状の材料で屋根や屋上床など広い範囲を覆うシート防水(低コストで汎用性が高い施工法です)、(3)ベランダや浴室内部など人の歩行に耐える強度をもったFRP防水(屋上以外の局所的施工に向いています)、(4)入り組んだ形にも柔軟に対応可能な塗膜防水(塗料の可塑性の高さを利用した方法です)などがあり、各々適材適所で使い分けるようにします。




 建物は本来 風雨から身を守るために建造しますが、建物の老朽化や防水層の経年変化により 漏水の危険性は少しずつ高まってゆき、メンテナンス無しには 防ぎきれないこともあります。もしも 雨漏りや水漏れが発生した場合、進入口から入った水は しばらく天井裏や壁内や床下など目に見えない部分を伝わり、実際の進入箇所からかなり離れた場所で室内に漏れてくることが多く、補修するべき進入口がどこかを見極めるのは大変困難です。時には部屋の一部を取り壊して探索しなければならない事もあります。原因がわからず放っておくと躯体内部の鉄筋や木材を腐食させてしまい、建物の強度不足にもつながります。特に日本は世界的にみても雨量の多い国であり、また地震も多く防水層の亀裂も発生しやすい厳しい環境です。現在では防水の材料の性能も高く、耐久性も向上したものがあるので、それらを用いて確実に施工すれば安心です。ただし現在、強い紫外線や酸性雨、鳥の糞などで防水層が劣化しやすい環境になっていることも事実です。定期的に検査をして不具合があれば早急に補修することが建物の寿命を延ばし最終的には建物の維持費を抑えることにもつながります。



(文:那須啓一郎



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