10章「石工事」


 久しぶりの このコーナー「お客様は建築主様です」・・・今回は石工事について お話をしましょう。古代ギリシャ神殿、エジプトのピラミッド、中世ヨーロッパ建築・・・昔の大規模建築は「石」を積み上げて建造する事が世界の主流でした。日本では木造がメインストリームとなってきましたが、明治時代に西洋の文化が浸透しはじめ、石積みの建築物が流行したものです。しかしながら・・・関東大震災によって崩れやすい石積みの建築のほとんどが失われ、以降 鉄筋コンクリート造などに石をスライスしたものを貼るという施工スタイルに変わり、今に至ります。つまり、地震国である日本において石を積んだだけの建築は耐震性に乏しく・・・しかしながら 「石の風合いは表現したい」という強い思いから、現在は主に壁や床の装飾材として石を貼り付ける施工を一般に「石工事」と言っています。



 石・・・最近の住宅建築では出番が少ないかもしれませんが、オフィスビルやホテル、公園、公共建築物には 今も多くの場所で使われています。石は大きな岩石から採取する材料という事で、ひとつの大きな面を目地なしで装飾できる特徴・利点があります。これは木材やタイルでは出来ない利点です。また、石の色や模様、風合いは採掘される国や地域で大きく異なります。火山岩から出来たもの、岩石が風化して粒になったもの、生物の遺骸と鉱物などが堆積して出来たもの、また それらが地殻変動などによって変性して出来たものなどがあります。それゆえ表情はもちろん硬さや緻密さも多種多様・・・しかし、どれもが長い年月を経て出来た地球の一部であり、それを「地球のかけら」として無垢のまま 建築に使うというところに大きな魅力があります。



 建築物の中では 主に床や壁で使われる石材・・・貼る場所や表現する意匠によって様々な仕上げを施す事が可能です。鏡のように磨き上げる本磨き仕上げ、祖面にして滑り止め効果を もたせるバーナー仕上げやブラスト仕上げ、手作業による味わいを付加する叩き仕上げや 岩石を割り剥がしたままの割肌仕上げなど、凹凸感を活かせるのも石の大きな特徴といえます。


 また、石は建築に重厚感を与えます。また「人工感」を感じさせない風合いが建物をより一層ひきたてます。外壁や床、インテリア空間に石を取り入れる事で 様々なデザインができるのも石のメリット(長所)です。そう、宝石も石の一種・・・というより「地球のかけら」ですね(笑)・・・これらは 人を惹きつける何かをもっていると常々感じています。


(文:那須啓一郎



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