12章「木工事」


 木工事は あらゆる建築物の内部の壁・天井の木下地、床板貼り、造りつけ家具や建具枠の造作・取り付けを含みますが、主には木造建物の建築工事をいいます。


 木造には 現在の主流である軸組構法・枠組壁構法の他、昔ながらの構法で釘を使わない木組による伝統構法、丸太組構法があります。軸組構法は土台・柱・梁・筋交・小屋組からなる構造で、古くからの日本の建築技法を発展させたもので 様々な間取りに対応できる自由性があります。幾度かの改良を加え、耐震性も向上しています。



 また 枠組壁構法は 2×4工法とも言われ、北米で発展した構法で、2inch×4inchから2inch×10inchの 規格化された木材と合板で挟み込んだパネルを 壁や床や屋根に用いて組み立てます。大きく開口すると構造上弱くなる可能性がありますが、建物にかかる外力を面で支えるため頑丈な構造体になります。材料と構法が規格化されており、熟練した職人でなくても高品質な建物が建築可能です。


 現在の建物は建材の材質や設備機器の性能が上がり、それらが効果的に機能するよう 高気密・高断熱の構造になっています。そのため、断熱材の充填・隙間相当面積の削減などの理由から 構造体である柱や梁は壁の中に覆われた状態になっていますが、壁内の結露や建材の腐朽を防ぐよう 壁内の通気を確保しつつ、外部からの騒音・粉塵・臭気・温度環境などから住環境を守ることができるような仕組みになっています。これは 現在の住宅環境が狭小過密の状態にあり、採光や通風が思い通りに確保できない宅内の温熱環境を空調機器を用いて省エネルギーで調整することにも一役を担っています。


 反対に、古い民家などを見てみると 柱や梁が見えるデザインになっており、壁も土を塗りつけたもので 断熱材などは入っていません。元来、日本の家は夏の猛暑をいかに快適に過ごせるかを基本に考えられているため、軒を深くして日射を避け、何枚も並んだ障子を全開にして風通しをよくしていました。そのため建物も常によい状態にあり長い年月建ち続けています。また釘を使わず、様々な仕口で木材を組み立てる伝統構法による建物であり、仕口の形がとても複雑でしっかりと作るには通常の木材よりも太い材料が使われるからという理由もありますが、集落のような 広い土地で密集することなく 建物が建てられていて採光・通風が ふんだんに取り込めるという環境が 建物が長持ちする一番の要因でしょう。これと同じことが別荘地にあるロッジなどの丸太構法にも言えると思います。


 また、最近は 造りつけの家具の依頼が増えています。真四角でない自由な間取りの設計が増え、その形状に合った既成家具がない事や 地震による家具の転倒を避けるため、また コスト的な問題などが主な理由でしょう。それと合わせて 建具についても規格外の形で製作するケースが増えている昨今、その建具を支える敷居や鴨居も木工事で行います。木工事は 一般的に大工さんが行うものですが、構造体を あまり露出しない建物、和室の減少などから、家具・建具枠・床板を除き ほとんどが完成後に見えなくなる部分の工事です。しかし、全ての仕上げ材の下地であり、その出来が仕上げに大きく影響するため 大変重要な部類の工事です。建物の完成度を左右するのは 今も昔も やはり 大工さんの腕によりますね。




(文:那須啓一郎



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なかのひと


今回も お読みいただき ありがとうございました