圓通寺〜比叡山 連続する風景のゆくえ
京都 北山での工事の合間をぬって、近くにある圓通寺さんを訪れました。まぁ、近いといっても細くて急な坂道を登らねばならないのですが(笑)・・・でも、一度訪れると また見たくなる風景が そこにはあります(私は5回目・・・リピーターです=笑)。
歴史は江戸時代初期に遡ります。「幡枝離宮」として造営された この建物と庭園は、後年 修学院離宮が完成するまでの間、後水尾天皇の居宅とされ、お移りになられた後に圓通寺と称されるようになったとのことです。ちなみに、幡枝離宮を造るための土地探しに費やした時間は・・・なんと12年とのこと。「景」を得ることにかけるエネルギーが いかほどのものか・・・ただただ感服するばかりです。その際に後水尾天皇が最も重要視されたのが、「比叡山が美しく見える」という点だそうです。市街地からの雄々しく聳え立つ姿とは違う、なだらかな尾根筋を見る そのやさしい姿は絶品です。
市中の ざわめきも消える この地を訪れる人の多くは建築やランドスケープデザインに携わっている あるいは 興味をもたれているのでは・・・そんな類推が なされます。なぜなら、ここは借景の名園だからです。もちろん視方向は比叡山・・・しかも、ただ「景」が置かれているだけではありません。この空間には、風景を律し、引き立たせるための「基準線」があります。建物の柱、縁、敷居、鴨居に加え、杉木立、「混ぜ垣」と呼ばれる入念に手入れされた生け垣、平庭に配された苔、砂、石・・・建物と庭それぞれに水平線と垂直線を構成するラインが織り込まれた幾何学的バランスが、人々の審美眼に応えているのでしょう。これを感覚的に とりいれて実践したのか、あるいは 建築家ル・コルビュジエ氏が唱えた「規準線(基準線と訳されることもあります)」のごとく 法則を発見したうえで実践したのかは定かではありませんが・・・間違いなく美しい空間です。
しかしながら、この美しい風景の維持も困難を極めている模様・・・実は、圓通寺さんと比叡山の間には一般の宅地が広がっており、今後 そこに中高層の建物が並んだ場合、それらが庭園から見える可能性を秘めているのです。この景観保護に対し、圓通寺さんも永年にわたって相当の対策を講じていると伺います。「一度失ったら二度と得る事のできない美しい空間」・・・日本の財産として、この風景(ランドスケープ)は なんとか守りたいものです。
(文:久保田正一)
■参考書物
Balance in Design 美しくみせるデザインの原則
- 作者: Kimberly Elam
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2005/09/08
- メディア: 単行本
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Design rule index―デザイン、新・100の法則
- 作者: William Lidwell,Kritina Holden,Jill Butler
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2004/06/27
- メディア: 大型本
- 購入: 7人 クリック: 305回
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- 作者: 後藤武,佐々木正人,深澤直人
- 出版社/メーカー: 東京書籍
- 発売日: 2004/04/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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規準線(基準線)の 参考になる or なりそうな 書物です。
■参考URL
JR東海「そうだ 京都、行こう。」
http://kyoto.jr-central.co.jp/kyoto.nsf/spot/sp_enthuji
建築家ル・コルビュジエの図面・作品資料
http://www.taisei.co.jp/galerie/archive/collect_1.html
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今回も お読みいただき ありがとうございました