多摩ニュータウン 2008 夏
先週末は毎年恒例の東京西部方面探索・・・東京 多摩ニュータウンを訪れました。例年ならば10月の訪問ですが、今年は7月・・・梅雨の合間、天候を気にしつつ、京王多摩センター駅で電車を降り、商業地区を通りぬけ、サンリオピューロランドの誘惑にも めげず(笑)、美しいランドスケープ(風景)が広がる多摩中央公園を横目に見ながら・・・目的地である「鶴牧・落合地区」へ・・・。
ここは1980年代に創られた街区であり、「基幹空間」という 大規模線形緑地空間を中心に街区が構成されている事で有名な住宅地です。実は 緑のオープンスペースの遥か向こうには富士山の頂上が・・・そう 基幹空間は この多摩ニュータウンのランドスケープデザインの決め手となる「景観軸」を兼ねたものなのです。
歩車分離による安心・安全な まちづくり の好例として位置づけられる この鶴牧・落合地区・・・グーグル(google)の航空写真でも その美しい街区を鳥瞰する事ができます。中でも、鶴牧東公園での風景(ランドスケープ)体験は印象深いもの・・・まったく整形ではないが、どこか整っていて、かつ、滑らかなスロープが斜面に巻きつくものの 強く印象づけるものではない・・・風景づくりの巧妙さを知ることとなりました。
時に・・・この1980年代の「ユートピア」は 現在も有効に機能しているのでしょうか? たとえば、手の届く場所にコンビニエンスストアがなく、賑わいも少なめ・・・子供は車の怖さを知らないまま育つ・・・歩車分離の立体交差によって生まれた高低差をつなぐ長大なスロープ・・・など・・・求められる都市像が変わったのでしょうか・・・いや、人間の心が変わっただけなのかもしれません。
ちなみに、この多摩ニュータウン(以下 多摩NT)鶴牧・落合地区は、1983年のTBSドラマ「金曜日の妻たちへ」(制作:木下プロダクション/TBS 脚本:鎌田敏夫 プロデューサー:飯島敏宏 ディレクター・監督:飯島敏宏、松本建 主題歌:「風に吹かれて(歌:ピーター・ポール&マリー)」、出演:古谷一行、小川知子、いしだあゆみ、泉谷しげる、竜雷太、佐藤友美、石田えり、佳那晃子、大原和彦、岩瀬威司、今井里恵、加藤健一、西川ひかる、あき竹城、直江喜一 他)のロケ地として知られます(※)。
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1970年代〜1980年代のテレビドラマは、この「場所」と「家族・人間」の関係をうたうものが少なくありませんでした。「金曜日の・・・」から さかのぼること6年・・・同じくTBSのドラマ「岸辺のアルバム」も 同じベクトルをもつ作品として話題を呼びました(原作・脚本:山田太一 、プロデューサー:堀川敦厚、ディレクター・監督:鴨下信一、佐藤虔一、片島謙二 、主題歌: 「ウィル・ユー・ダンス(歌:ジャニス・イアン)」、出演:八千草薫、杉浦直樹、中田喜子、国広富之、竹脇無我、風吹ジュン、新井康弘、村野武範、原知佐子、津川雅彦、沢田雅美、山口いずみ 他) 。
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両作品とも「自宅+周辺環境」を基点したドラマとなっています(「岸辺・・・」=多摩川東岸、「金曜・・・」=多摩NT)。かつてアメリカ開拓者が西海岸を目指したように、東京都民の夢は多摩川を渡り、西へ向かっていたのです。特に後者(金曜)は、「人口増加→ニュータウン居住」という図式の象徴とも言える団塊世代の家族が主人公となっているため、主題歌として ピーター・ポール&マリー(PPM)の曲が選ばれたわけです。これら1970年代〜1980年代のドラマは「場所性」を その重要な拠り所としています。しかし今は・・・皆が携帯電話という移動型コミュニケーションツールを持つようになり、場所の重要性は一気に失われてしまいました。「待ち人来たらず」・・・ではなく、「来なければGPSで居場所を探して会いに行く」で よいのです(笑)。最近のテレビドラマに共感を持つ事ができない方は こういったところが気になっているのかもしれませんね。
完成してから20年以上経っているにもかかわらず、多摩NTの公園や街路が今でも綺麗に整えられ、素敵な雰囲気を保っているのは、住民ひとりひとりが街と真摯に向き合う姿勢を持ち続けている証拠です。羨ましく感じるとともに、その意識の高さに感心させられる一日でした。コミュニティ形成に前向きな多摩エリア・・・これからの意識を感じました。
(文:久保田正一)
(※)皆さん御存知のように、このテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」は、初作の好評を得た後、シリーズ化されてゆきました。今回の記事で とりあげた多摩NTがロケ地とされたのは 第1作目です。その後 舞台は南下し、東急田園都市線沿線に移っていった事を付け加えさせて頂きます。
■参考URL■
ドラマロケ地案内 http://location.la.coocan.jp/
全国ロケ地ガイド http://loca.ash.jp/
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今回も お読みいただき ありがとうございました