コミュニケーションツールとしてのスクラップブッキング


 久々の建築ブログアップ・・・前回の記事を書いている時は「4月になれば自分でペースを作って仕事を進められる」と思っていたのですが、それは甘かったようでして・・・(笑)。数ヵ月後に完成を迎える3作品の打合せ、新たに寄せられた建築相談、加えて新学期を向かえた大学の授業準備・・・ゴールデンウィークという国民的行事も 私にとっては日常でした(笑)。

 住宅計画における忙しさは、コストや規模ではなく件数によるものだと常々感じます。大きな家も狭小住宅も同じ、また瀟洒な家もローコスト住宅も同じ・・・全てにおいてクライアント(お客様)との入念な打合せが重要・・・しかしながらタイムリミットは存在します。完成日は融資や引越し日程ともリンクしますからね。ゆえに、設計者はクライアントとのスムーズな内容確認が求められます。

 現在、設計者とクライアントを つなぐ有効な手段(コミュニケーションツール)といえば・・・それは電子メールでしょう。クライアントの希望が本人の手によって一旦「言語化」されることで、気持ちの整理がつきます。メールのやり取りを重ねることでカタチ・色・素材の決定時に発生しがちな「気持ちのブレ」も軽減されます。図は描けなくとも文章は書ける・・・単なる作文+伝達ではない たいへん重要な行為です。

 この「言語化」と並んで有効なコミュニケーションが、「画像提示」です。写真や雑誌・書籍の掲載ページを挙げながら感動を伝えることで、設計者とクライアントのイメージを近づけることができます。今回は、この「画像提示」における効果的な手法を紹介します。

 昨年 完成した「ur-house」(静岡県静岡市)・・・打合せに入る前、私は お客様から一冊のスクラップブックを預かりました。空間イメージ・素材感・設備機器の写真の切抜きが貼り込まれたものです。我々は、これをもとに条件整理し、設計作業を進めました。 もちろん、スクラップ写真には「迷い」も表れています。ただ、これを整理して計画案をまとめるのが我々の職能・・・迷いも含め、クライアントの気持ちを知ることができる この一冊は たいへん有益な資料と言えます。

 これほどピュアな住宅建築スクラップブッキングを見たのは初めて・・・望むべきモノ・コトが掲載されていた雑誌・書籍の画像が切り抜かれ、そこに御家族のショートコメントが加えられています。テイストにブレがないのは、さすがといったところ・・・建築家力(設計力)も大事ですが、ur-house においては、「クライアント力(施主力)」を強く感じました。

 スクラップブッキング編集・・・労が伴うものゆえ なかなかできることではありません。振り返って、「自分がクライアントであった場合、建築家に これだけの資料を提示できるか?」と自問すると・・・自信半ば・・・(汗)。やはりクライアント力・・・御家族(特に奥様)に感謝です!



(文:久保田正一



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今回も お読みいただき ありがとうございました。



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