12年ぶりの再会〜「海の博物館」(鳥羽市)

 6月13日は年に一度の「建築研修会」・・・昨年の大磯に引き続き、今年は三重県です。目的は2箇所・・・海の博物館伊勢神宮・・・そのうち、今回は「海の博物館」について記します。

 この建物が全面完成したのは1992年・・・かれこれ17年 経ちます。実を言うと・・・12年前、私は かつての教え子たちとともに この地を訪れたことがあります。その中の一人が現在お世話になっている庭師 園三さんだったりします(笑)。

 海辺エリアに生活する人々の文化・道具を伝承すべく創られた「海の博物館」・・・これは建築家 内藤廣氏が設計した秀作として広く世に知られています(※)。ここで見るべきは建物や風景を含めた全体的空間・・・各種メディアにおける「海の博物館」は その構造が注視されますが、私にとっての第一の感動は建築単体ではなく、地勢を読みきって配棟されたランドスケープデザインの美しさにあります。

 この心持ちは私に限ったことではないでしょう。実は、ここを訪れた全ての人々が体験しています。具体的に言いますと・・・どの場所で写真を撮っても素敵な風景を捉えることができるのです。

 カメラに関して全くのアマチュアである私が撮影しても・・・(笑)。これまで趣味と実益をセットにしながら国内外で美しい建築・美しい風景をカメラにおさめてきたものですが、その中で最も清く完結した風景の好例として、この鳥羽の空間は私の記憶に深くとどまることとなりました。

 同時に、100年後の姿を見据えて設計されたと言われる空間のエイジングも魅力的です。かねてより近代建築は完成直後が最も美しいとされた感がありますが、この「海の博物館」は それらの特徴とは異なったスタンスを保持して。塩分をたっぷりと含んだ海風を浴びながら沖に漕ぎ出す船のように・・・ハードな環境に包まれながら持続的に「在る」のです。正直なところ、もっと風景に馴染んでいるかなと思いつつの再訪でしたが、管理される方々の努力のおかげで、まだまだ若さを示す空間・・・ますます今後が楽しみになりました。

 見事なまでに環境に溶け込む建築群・・・卓越したデザイン力と的確な素材選択の審美眼によって、かえって一般的な眼力では見過ごされてしまう・・・それほどにまで巧みな「同化による認識の超越」を体感することができました。


 ということで、今日は ここまで・・・建築へと続く記述は次回ということで・・・しばし お待ちくださいませ(笑)。



(文:久保田正一



■関連URL
海の博物館 http://www.umihaku.com/
内藤廣建築設計事務所 http://www.naitoaa.co.jp/
松岡正剛の千夜千冊 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1104.html
現代建築ギャラリー http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~masato/ca_g/review_28/index.htm
ARC STYLE http://www.arcstyle.com/mie/seamuseum.html

■追記 記事
中日新聞:海女文化を分かりやすく紹介 海の博物館がガイドブック発行」
http://tabi.chunichi.co.jp/odekake/0701002mie_guidebook.html
AB型のココロ
http://musicstar2006.blog54.fc2.com/blog-entry-329.html


(※)日本文化デザイン賞、日本建築学会賞芸術選奨励賞、公共建築百選、吉田五十八賞など数多くの賞を受けています。


今回も お読みいただき ありがとうございました。


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