18章 塗装工事

 今回は塗装工事について記します。

 建築における塗装工事は装飾としての着色、耐久性を確保するための保護、防火のための塗装など多岐にわたります。最近は、床材・建具・家具の ほとんど「既製品」としてすでに塗装されているものが多く、実際の塗装工事は減少傾向にあります。しかしその一方で、無垢材の人気は根強く、無垢の床や 造りつけの家具を製作した場合は、保護と着色を目的に現場で塗装を施します。

 また壁や天井なども塗装で仕上げると、クロスを貼った場合とは ひとあじ違った雰囲気となります。塗る材料の模様や凹凸が表面に表れる「素材感」が感じられるのです。さらに、自由に色が選択できるため、さまざまなコーディネートに対応することができます。

 塗料には、材料の表面に強い塗膜を形成するもの、材料の奥に浸透するものがあります。錆を防ぐ場合や材料の表面を塗りつぶしてしまう場合、また水分の浸透を防ぐ場合などには前者の塗膜を形成する塗料を使用します。素材そのものの風合いは薄れますが耐久性が高く発色も強いため、長期間の耐久性を求める場合や色彩のコントラストを強いデザインを採用する際に使われます。

 また、後者の塗料は木材で製作した建具や家具などの造作材、無垢の床材などに使用します。木目や肌触りを残しながら塗りつぶすことなく淡く色を着けます。表面だけでなく材料の奥まで浸透するので、材料の防腐性や撥水性を高めることが出来ます。前者よりも耐久性が劣るため短い期間での塗り重ねが必要ですが、自然な感じを出すにはこちらを選択する場合があります。

 ほかにも様々な機能を持った塗料が出てきています。例えば、塗装するだけで防火性能を高めるもの、外部からの熱を遮るもの、弾力性を持ちひび割れを防止するものなど着色だけでなく特殊な塗料も増えてきました。それにより今までにない材料の使い方や斬新なデザインの建物が実現可能になってきています。

 DIY人気にともない様々な塗料や道具が購入できるため、今では一般の方でも手軽に塗装が楽しめるようになりました。ただ、やはり「餅は餅屋」・・・新築工事において「クオリティ」を求めるならばプロの手を、「記憶」を求めるならばセルフペインティング・・・TPOにあった選択をされる方が増えてきている昨今です。



(文:那須啓一郎)







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なかのひと