旅先にて見えるコト 合法的ランドスケープ
ただいま出張中です(笑)。ふだんとは違う街を歩くだけで気の置き場がかわる感じがします。それほどウキウキしているわけではないのですが、心が軽く感じます。そんな時は、交差点で信号待ちをしていても、ついつい左右の風景を確認してしまうものです。特に市街地ではビルによって空が見える視覚的面積が限られるため、思わず上空を見上げてしまいがちです。そんな交差点の向こう側の建築写真です。
この建物も完成してから10年以上経っているのでしょうね。現代の建物とは言えない「ひと世代前」の形状のトレンドを感じます。このような情景は大阪市内淀屋橋の裏通りに多く見られますね。1970~1990年代あたりに計画されたビルは、このように上部が斜めにカットされた形状になっています。これには理由があるんです。建築基準法では「斜線制限」によって建築可能な高さを定めています。つまり、行政によって導き出されたカタチです。ただ、現在は様々な緩和措置のおかげで建物形状に自由度が広がったため、このような形状は影を潜めつつあります。「築10年は経っているな」というのは、そういった理由によるものです。「街の特性のアウトライン」は行政によって提示されています。たとえば、用途地域を策定する事で街区における建築用途は制限されていますし、建ぺい率・容積率・高さの制限で街のヴォリュームが定められています。すべての建物は、こういったガイドライン=制度=を守って生まれた建築です。写真のビルは、当時の行政が描いた建築形状を忠実に具現化したものと言えます。
日本のまちなみとは、こういった時代性を次々と受容しながら成立する建築物の連続です。新旧の建築・ランドスケープ全てを含めて統一性を求めようとしても、日本がヨーロッパと同じ景観構造を作り出すこと自体に無理がありますね。可能性があるとすれば・・・それは、街区に住むすべての住民が、風景、建築、色彩などに同じテイストを持つ事が必要です。これでデザインが共有される・・・はずなのですが、やはり自ら出資して建てるものですから「自由・個性」という意志が優先される・・・これも理解できます。
テイストを審査する事が難しいというか触れにくいのは事実です。ただ、多様な中にもデザインコードを共有できる文化ならば、もう少し「かみ合った感じ」のまちなみになると思うのですが・・・(笑)。
そんな時に思い出すのが、この本です。
- 作者: 吉村靖孝
- 出版社/メーカー: 彰国社
- 発売日: 2006/05/01
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(文:久保田正一)
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■写真:上部が絞り込まれたビル
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今回も お読み頂き、ありがとうございました。
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