3尺モジュールか? 1mモジュールか?



 モジュール・・・住宅計画を考えた事のある方ならご存知ですよね。先週のモデュロールは20世紀半ばにル・コルビュジェが提唱したものですが、モジュールとはそれより以前から存在している「平面図(間取り)を試行する際に用いる基本寸法」です。


 そもそも日本の住宅建築は、「分・寸・尺・間」などの長さを示す単位と「帖・坪」などの面積を示す単位によって、その規模を示してきました。その中で最適なモジュールとされるのが「3尺」であり、これを柱と柱の中心間隔として計画されるのが「3尺モジュール」の木造住宅です。(3尺=910mm ないしは 909mm)。一方、最近では「1mモジュール」の住宅も存在します。


 では、どちらを採用するか・・・最大の比較は最小通路巾や最小空間巾でしょう。3尺モジュールの場合、内法は約78cmとなるのに対し、1mモジュールでは約87cmです。この巾は廊下やトイレの内法に適用されがちです。今まで住んでいた家で廊下や階段、トイレが狭いと感じていたクライアント(お客様)からは、1mモジュールの希望をよく聞きます。たしかに、「少し広めの空間」は日常生活の上で嬉しいものであり、引越時の荷物搬入も容易になります。また、高齢者との共同生活にも有効です。


 その一方、建材市場に目を移すと、まだまだ3尺モジュールが過半を占めています。それは柱の間隔だけではなく、合板・ボード類、サッシなどの規格が3尺を中心にしたラインナップを組んでいるからです。型枠にもベニヤが使用される事から、鉄筋コンクリートの建物も3尺モジュールを援用した設計になります(特にコンクリート打ち放しの建物のでは「セパ穴」と呼ばれる丸いえくぼのような穴が整然と並ぶ様子に美しさを感じるものです)。「タテ・ヨコ・高さ」の3次元空間としてみると、3尺モジュールの方がプロポーションが良く、居心地も良く感じます。この部分は個人差があるとは思いますが、私はこの古くからよしとされた3尺モジュールの3次元バランスを心地よく感じ、日本人のアイデンティティを感じる心がしみついているようです(笑)。折しも先週、小学校の恩師の家を訪ね、懐かしい8帖2間の「続き間」で談笑した際に、その居心地の良さを再認識したところ・・・


 では、ここで「究極の選択!」・・・と、大げさに考える必要はありません(笑)。自由度をもった3尺モジュールと1mモジュールをミックスした住宅計画が可能なのです。いま進行中の2件の住宅(東京・静岡)もミックス・モジュールです。双方のメリットを活かした設計によって、有効な通路空間と快適な居住空間が得られるのです。コストも心配いりません。ミックス・モジュールに対応できる建築家・建設会社に相談する事で、コストの心配もありません。夢は大きく広がります。


(文:久保田正一

■写真:「尺」と「メートル」が併記されているスチール定規。9cmの差は大きい。


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