2章 仮設工事



 建物を施工する際には、仮設工事が必要になります。「仮設」というネーミングゆえ、その大切さが伝わりにくいジャンルですが、この仮設工事なくしては先の建設工事を進めることができません。今回は、建設工事のうえで欠かせない「仮設工事」について解説してゆきます。




■地縄
 工事を始める前に、建築主、設計者、施工者の立会いのもと 建物と敷地の位置関係を確認する必要があります。そのため施工者は、建物形状に合わせて縄(またはビニール紐)を地面に張ります。これを「地縄」もしくは「縄張り」といいます。原寸大の下書きのようなものですね。これを基準として、建物形状に間違いがないか、敷地境界線からの距離は問題ないか、給湯器・エアコン室外機などの設備機器スペースが確保されているかを関係者全員でチェックします。
この時、多くのお客様から「この家・・・けっこう狭いですね」というコメントが出ます。しかし、数週間後の上棟の際には、「意外と大きいですね」というコメントにかわります(笑)。2次元と3次元では感覚にズレが生じやすいものだと実感する瞬間ですが、大丈夫です。あわてずに・・・。


ベンチマーク
 建物の位置が決まったら、次に建物の高さの基準を定めます。敷地の境界に杭やブロック塀があるときはそれを基準にします。基準になるものがない時は、新たにポイントとなる杭を地面に打ち、それを基準にします。これを「ベンチマーク」といいます。図面上では「BM」や「KBM」や「TBM」と表記されています。


■遣り方(やりかた)
 建物の位置・高さが決まると、いよいよ基礎工事に入ります。ですが、先の地縄を張ったままでは地面を掘る事ができませんし、正確に決めた建物が不明瞭になってしまいます。そこで、建物基礎を囲むように、木材などで柵状の囲いを作ります。これを「遣り方」といいます。この柵に対して、必要寸法や印を記入し、水糸(水平に糸を張って基準線を作る いわば「空中の地縄」)を張る事で、基礎の位置を正確に割り出してゆきます。これが基礎工事の際の「定規」となるのです。


■足場
 基礎工事が終わると、次に建物の躯体(骨組)の工事が始まりますが、ここで必要になるのが「足場」です。工事中にずっと設置されているので、皆さんも目にした事があると思います。足場は、外壁を貼ったり塗装を行う高所作業者の安全確保のために必要であるとともに、建材の落下や飛散による事故防止の役目も担っています。ゆえに、足場には全面にメッシュ・ネットを張っています。足場は、建物の躯体工事の開始から外装工事が終わるまで建物全体を包み込んでおり、完成の少し手前で外します。この足場が外れる瞬間は、われわれプロにとっても突然建物が出来上がったかのような感覚になるもので、毎回感動を覚えます(笑)。


■その他
 この他、施工中に職人さんが使用する仮設トイレや、大規模工事の際には仮設現場事務所・休憩室、引火物等の保管のための危険物貯蔵庫、歩行者や近隣の安全対策としての仮囲い等を設置する場合もあります。




 しっかりとした仮設工事ができていない現場は危険です。作業もやりづらくなり、工事のクオリティにも疑問符がつきます。作業も出来栄えも「仮設に始まり仮設に終わる」といっても過言ではないでしょう。


(文:那須啓一郎


■写真:遣り方(写真左)と足場(写真右)の様子(house-MZ


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