3章 「土工事」



 建物は基礎を堅牢につくる事から始まりますが、その本体工事に入る前に、「地盤の工事」を行う場合があります。地盤が十分な地耐力を有しないと、建物全体の安全性を保つ事はできないからです。そこで、今回は基礎より大事な地盤について記してゆきます。


 通常、建物は平らな土地に建てます。建替えや分譲地の場合、土地は既に水平に整地されていますが、そうでない場合は、なんらかの手を加えなければ住宅建築が進められません。この凹凸な土地を平らに整地することを「土工事」といいます(※)。


 一般的な整地では、敷地の凸状になった部分を削り取り(切土)、凹状の部分に土を入れて(盛土)ゆき、全体に水平な面を作成してゆきます。また、広く傾斜した土地を分譲地として開発する場合は、住宅一軒〜数軒分ごとに段々畑状に整地してゆきます。ただし、ここで注意すべきは盛土の部分です。一度掘りこした土は空気と水分を含み膨張します。それを凹状に部分に載せただけでは地耐力が低く、そのまま建物を載せてしまうと間違いなく地盤沈下します。盛土した地盤が安定するまでには、地盤の転圧・補強をしない限り少なくとも数年はかかります。分譲地でも地盤の転圧・補強を確実に行なった上で販売している土地とそうでない土地がありますので、購入の際は充分に調べることをお勧めします。


 計画地の地盤状態を伺い知るために、ちょっと頭に入れておいた方がよい事をお教えしましょう。「地名」が手がかりになるのです。地名は、地盤の素性を表していることが多々あります。「田」、「沼」、「谷」、「崩」等いろいろありますが、これらの文字が含まれ地域は元々田圃や沼地、谷地であった場合が多く、実際に地盤を調べると粘土層が多く地下の水位が高い場合がほとんどで、概して地盤はあまり強くないとされます。但し、土地区画整理事業市町村合併により町名、地域名を変更した場所もありますので、ご注意下さい。なお、過去の地名・町名は、法務局に保管されている不動産登記簿に記載されています。土地の過去が全てわかります。登記簿閲覧にはお金がかかりますが、気になる方は調べてみてはいかがでしょう。


 逆に、丘陵地や自然堤防(他の部分より0.5m〜3m 高くなっている河川沿いの微高地)、昔から集落があった土地、古くから建物がある土地は、良質の土が堆積し、土壌の保水率も少なく、充分締め固められた地盤になっている場合が多いです。


 もし、これから土地を取得しようとお考えの方には、永年住まれている近隣の方へのヒアリングをおすすめします。これにより、地盤のみならず浸水経験、風の流れ、路面凍結など、四季を通じた有益な環境情報が得られます。また、コミュニケーションを交わす事で、今後のお付き合いも楽になります。何事も礼節を持って・・・という事ですね。


 これらリサーチで、おおよその予想はつきますが、やはり建物を建てる際には詳細なデータが得られる地盤調査を行う事をお勧めします。敷地の履歴、地盤状況を把握した上で、適切な基礎形状や地盤補強を計画できるからです。


 次回は、これら地盤調査・地盤補強に関する「地業工事」について説明します。ご期待下さい。


(※)「カウフマン邸(落水荘)」(設計:フランク・ロイド・ライト氏)、「ダグラス邸」(設計:リチャード・マイヤー氏)、「六甲の集合住宅」(設計:安藤忠雄氏)など、あえて傾斜地に挑戦した有名建築もあります。

■写真:左から掘削、転圧、整地完成の様子(施工:久保田建設株式会社

(文:那須啓一郎


□□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□

  今回も お読み頂き、ありがとうございました
  お気に召しましたらば、以下ランキング 2 click をお願いします

  1 click ! )人気blogランキング

  2 click ! )にほんブログ村 デザインブログ

□□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□ □□