基準としての垂直・水平


 「資料整理」の名のもと 建物写真を見直す機会が多い昨今です。昨年の大掃除の延長とも言えましょうが(笑)、書き留めておくべき事かと思い、ここに記します。


 建築物を撮影する場合、大きなポイントが2つあります。


まず、「引き(被写体からの距離)」です。特に、物理的に下がりきれない小道からの外観撮影や小部屋での1カットは如何ともしがたいものです。その場合、広角レンズを手にすることになりますが、しかしながら、この広角レンズを使った場合、タテ・ヨコ・高さの平行線が倒れこむ状況が強調されるのです。透視図法を用いて描かれたルネサンス期以降の絵画を想像して頂ければよいでしょう。街並みは遠くに行くほど、塔は上空に行くほど 小さく描かれます。



 一方、「ゆがみ」も悩みどころ・・・レンズの特性上 周囲の画像が歪みやすいものです。スナップ写真であればそれも一興なのですが、こと建築写真では なかなか受け容れ難いもので、フラストレーションは設計者本人が強く感じるようです(笑)。理由は簡単です。多くの建築物は設計者の脳内イメージから出発したものだからです。カルテジアン・グリッドに構築された 歪みない思考空間の中で計画案が生み出されているからです。



 以前、「お客様は建築主様です 2章 仮設工事」においても述べましたが、このイメージを実現すべく、実際の工事では水平・垂直方向における「基準」を決めてから仕事にかかります。建築家の頭脳から設計図面にトレースされた空間を実空間に構築するために絶対必要な事です。


 しかし同時に、自然界に「完全なる水平・垂直」が存在しない事を 誰もが知っています。地球は丸いのですから、水平線の両端は下がっていて当然なのです。それでも「水平線」と呼びます。緑色の信号を見て「青信号」と言ってしまうように(笑)。ただ、一般住宅規模では、この視点は大きな意味を持たず、誤差を気にするには至りません。職人の感覚は生き、測量機器も性能を果たします。


 その一方、カルテジアン・グリッドの存在自体をテーマにした建築作品も数多く生み出されているという昨今の流れからも目を離せません。しかしながら、そこに共感しうるのは まだ少数・・・多くの地球人は いまだ重力にとらわれ、垂直・水平を基準としています。シャア・アズナブル氏ではないですが、スペース・コロニーに移住したあたりで意識が変わるのかもしれませんね(笑)。



 ちなみに今日の海・・・私のコンパクトデジカメでは水平に見えます。ただ、そのフレームの外側・・・実際に見える海の両端は・・・下がっていました。


 あと 言い忘れましたが・・・私の撮影の「腕」・・・これが最も重要な問題でした(笑)。
自己研鑽に励む決意を新たにして望む 穏やかな春の海でした。


文:久保田正一


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今回も お読みいただき ありがとうございました。