海へ 西へ 過去の記憶へ(焼津港) 


 先日、ふと海が見たくなって車を西へ向けました・・・などと書くと、「さぞや内陸にお住まいで・・・」と思われるかもしれませんが、オフィスから車で5分走ると海が見えるので、そんな事はなく(笑)・・・しかしながら、どうも静岡市内は「海が遠い」のです。なぜでしょう?


 理由は簡単です。防波堤と消波ブロックの存在が大きいため、走行車両の視線からは「砂浜に波打つ海」という ゆるやかな関係性が失われ、「コンクリート塊と青く光る水」の対比に置き換えられているからです。


 元来、海浜は波がゆらぎ、境界線が絶えず動いていました。しかし、現在の海岸線 特に人間が近づくエリアであればあるほど人工構築物によって境界が固定され、不連続な空間構成を呈する事になります。


 それに関連する話として、以前、知人から「地図でいうところの陸地と海の境界線って どうやって決めたのでしょうね?」と聞かれ、ハッとした時の事を思い出します。たしかに・・・海を眺めていて風景画を描く事はできますが、地図は書けませんからね(笑)。国土地理院によれば、「海岸線とは満潮界を表示する」とされています。その調査を含めたデータの作成に関しては、ここに記載されています。


 まぁ、そんな事をつらつらと考えるうちに、車は焼津に着きました(笑)。



 まずは新港エリアにある「アクアスやいづ」を発見。ここはタラソテラピーを用いた健康施設です。逆円錐形の形状が印象的ですね。これほど焼津の海浜エリアが整備されているとは知りませんでした。


 そこから車を東に向けてみると、途中でワイルドなボックスを発見。リチャード・セラの作品のようなスチールのプレート、フレームワーク・・・いったい何に使うのでしょう?(※)



 さらに東へ行くと、私が昔から知る「焼津港」がありました。時は既に夕刻・・・日曜という事もあり、静かな空気が流れています。船員相談所、陸送売場・・・単語の意味さえわからない私ですが、魅力的です(笑)。



 気がつけば日没間近・・・多少手ぶれをおこしつつ、対岸のヴォールト屋根を見ました。



 漁港としての護岸形成がなされているので、海と陸の関係を言えば静岡と同じく不連続な風景のですが、港内ゆえに波は穏やかで海水面が非常に近いのです。夕闇迫る中でもゆったりと散歩する人々が往来するのを見ていると、この旧焼津港周辺が「飾ることのない普段着のウォーターフロント」として人々に愛されている事を実感しました。


 この施設 いつまで残されるのでしょう? 「保存か解体か」という論議について、以前、静岡放送「SBSテレビ夕刊」などで特集が組まれていたようです(2006年2月6日放送)→ ココでご覧下さい。


このような記録サイトもありました 

1) 写真機の森(「ご近所散策」内)
2) 焼津旧港
3) 旧焼津港
4) 焼津、旧焼津港



 たしかに、実際に見ると、この施設と風景を保存したくなる気持ちにもなります。ただし、ノスタルジー半分・・・耐震性、経済性、将来性などを考えると、気持ちは波のように行ったり来たり・・・人生と時を共有した「場」の風景・・・しっかりと心に留めておきたいものです。


(※)解説 

分からないままにしておくのも悔しいので(笑)、翌日、土木に詳しい知人に聞いてみました。すると、「その赤錆色の鉄の箱は『方塊ブロック』の型枠で、焼津港沖のケーソン基礎が動かないよう根固めに使用されるものです」との明快な回答を頂きました。加えて、「脱型時に剥離剤等を使用すると海水環境の悪化に繋がるため、型枠表面は錆びた状態としてあります。潜水士の話によれば表面にサビが残るコンクリートの方が海藻の生育状況が良いそうです」との事。予想以上のレス 恐縮です(笑)・・・海洋土木の知識不足を身にしみつつ・・・勉強になりました! ちなみに・・・リチャード・セラ(Richard Serra)については、コチラを参照下さい。


文:久保田正一




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今回も お読みいただき ありがとうございました。