13章 屋根・樋工事


 今回は屋根と樋について記します。現在の建物の屋根には、金属板、粘土瓦、スレート瓦など様々な材料が使われています。特に最近は、金属板の屋根が多くなりました。これは、屋根が軽量になり地震時の負担が軽減できること、瓦に比べてコストがかからないこと、急勾配または緩勾配の屋根にも対応できることが主な理由です。


 金属板の基材は、主にガルバリウム鋼板やカラーステンレスが選ばれます。どちらも様々な色が用意されており、最近の建物デザインに対応しうる材料です。防錆処理も施されているため、長期間の耐久性を有しています。金属板には この他に 銅板葺き という選択肢も あります。銅は非常に柔軟な金属のため寺社建築などの反り、むくりのついた屋根に適しています。初めは銅色に輝いていますが、年月を経るにしたがって、だんだん腐食し緑色になっていきます。家全体の「エイジング」とともに 味わい深い印象を与えてくれるものです。



 一昔前までは粘土瓦が主流でした。最近では金属板に押され、施工物件も減少していますが、今でも粘土瓦は断熱性、耐久性において屋根材の中でも非常に高い性能を持っています。瓦は下地の横桟に土を付けながら引っ掛けるように葺いていくため 屋根の勾配にある程度制限がありますが、逆に その効果が屋根形状の揃った古き良き町並みの形成に役立っています。



 上記の他に、スレート瓦というものがあります。これは、金属板と粘土瓦の中間的な位置づけとされ、様々な屋根形状への対応が可能です。またコストもあまりかからないため、全国的に普及しています。


 その他、世界遺産で有名な白川郷の茅葺屋根や厳島神社の檜皮葺屋根などがあります。日本に限らず昔はその土地で得られる土や植物などで屋根材を作っていました。そのため地域内の屋根はほぼ全て統一されており一つの景色になるほど美しい情景を見せてくれます。


 次に、樋(とい)の話を しましょう。屋根を伝って降りてくる雨水を受け止め、地面に導く役目をするのが雨樋です。現在では、主に塩化ビニル、ステンレスが多用されています。樋がないと雨水が敷地内に垂れ流しになり、庭や建物を汚してしまう原因になります。その一方、あえて樋をなくし雨の流れを楽しむという考えもあります。その場合は雨の落ちる部分に砂利を敷いて泥のはね返りを防ぎ充分に雨水が浸透するよう 庭の作り方にも配慮する必要があります。また樋を鎖樋を使うことで 雨水が流れるのを見て楽しむこともできます。どちらも雨の多い日本でこそ味わえる 昔ながらの工夫です。


 昔から雨の多い日本の建物は「屋根の建物」と言われてきました。それだけに、日本には様々な屋根形式があります。古い町並みの保存が叫ばれ各地に保存地区が点在していますが、目線の高さでの観察だけでなく屋根の連なる町並みを少し遠くから見下ろした景色を眺めてみるとあらためて屋根の表情の素晴らしさに日本の美を感じることができると思います。


(文:那須啓一郎


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