16章 建具工事


 秋を感じる今日この頃・・・みなさん いかが お過ごしでしょうか。
少しずつでは ありますが 着実に進行中の このコラム・・・今回は建具工事について記します。



 建物の持つ役割のひとつに、「そこに暮らす人々を外部からの風雨や日射、視線から守る」ということ・・・すなわち「シェルター」としての機能が挙げられます。しかしながら、「ただ閉じる」だけでは いけませんよね。人間も建物も周辺環境と連携している=生きているのですから・・・窓をつけて空気を入れ替えたり光を採り入れることで室内環境を調整する必要があります。もちろん各部屋へ移動できるような扉をつけることも必要です。

 このように、風・光・人等が通過できるように壁または天井の一部をあけて開閉できるようにした部分を「建具」といいます。建物内部のドア・引戸・開き戸や外部の窓・サッシなどが これにあたり、内部は木製ドア、外部はアルミサッシが多く採用されています。一般的には、メーカーさんが有する規格サイズからセレクトすることで、施工の迅速・簡略化・コストの抑制を図っています(※)。一言で「規格品」と言っても多種多様なデザイン・機能を有する建具が ありますから、我々は、その中から建物の雰囲気に合わせて選択することができます。特に、サッシについては防犯性を高めたものや断熱性を高めたものもあり、立地環境に合わせて それら機能を付加することで住環境のグレードを高めることが可能です。



 ここで少しだけ建築史的考察を・・・
日本に現存する最古の木製建具は、奈良県法隆寺金堂出入口 一枚板戸と言われます。その後、建具は社寺の柱と柱の間につけた観音開きの板戸(いたど)、上方に跳ね上げる蔀戸(しとみど)、開けても邪魔にならない引戸(ひきど)へと進化・発展し、さらに、閉めたままでも明かりが透ける障子戸(しょうじど)、風雨にも耐えるガラス戸(がらすど)が生み出されるなど様々な趣向が見出されつつ今日に至ります。

 建具は建物全体のデザインに大きく影響するものです。特徴ある外観デザインやインテリアを表現する場合、既製品ではなく特注品を製作することもあります。特に、建築家や設計事務所が関わる作品にはオーダー品が多く使われています。格別の建具を用いることでデザインコンセプトも明確になるということですね。セレクトオーダー・・・この潮流・・以前は大規模建築がメインでしたが、最近は小規模のものにおいても 壁面全体にガラスを用いて開放感いっぱいの空間をつくりあげた住宅作品も見受けられるようになりました。ガラスの性能が上がり 冷暖房負荷を軽減できるようになったため、今後も大きな開口をもった新しい住空間が実現されてゆくことでしょう。



(文:那須啓一郎


(参考URL)

■板戸 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BF%E6%88%B8

■蔀戸 http://www.archiphoto.jp/photo/dykuri_17.html(京都 高山寺 石水院)



今回も お読みいただき ありがとうございました。




なかのひと