平等院鳳凰堂 シンメトリカルかつドライなる彼岸


 前回高山寺に続いて訪れたのは京都府宇治市・・・明恵上人に誘われるがごとく、ベクトルは「お茶」によって定められ(笑)・・・平等院を含む一連の歴史的建築群は世界遺産にも登録される貴重なものですが、その中で最も有名な「鳳凰堂」について記しつつ、ゆく年を送りましょう。

 平等院鳳凰堂は、藤原頼通によって1053年(天喜元年)に建立されました。当時の社会情勢を語るキーワードといえば末法思想・・・極楽往生を願う風潮が社会に浸透していたという・・・この記述を目にすると、多くの方が中学・高校の社会の授業を思い出すのではないでしょうか。個人的には鳳凰堂に安置されている「阿弥陀如来像」を見てフラッシュバック・・・中学の期末テストで「平等院鳳凰堂にある阿弥陀如来像の作者は?」という問いに、「定朝」と書けなかったことを今も鮮明に覚えていて・・・今回は、その反省も兼ねているのかも・・・(笑)。とは言いつつも、まぁそんなにセンチメンタルな旅でもないので(笑)、話は次に進みまして・・・初来訪の私が見た「リアルな鳳凰堂」は、今まで思い描いてきた「イメージとしての鳳凰堂」とは少なからずギャップがあり、そこに2つの興味深い事実を確認しました。

 ひとつは対象性(シンメトリー)について・・・写真や教科書において我々が知る鳳凰堂の姿は、圧倒的にシンメトリカルで美しい東立面(ファサード)です。というか、これ以外の姿をイメージしていません。あなたの財布に入っている10円硬貨に刻印された図も同じですよね(笑)。しかしながら、来訪者が最初に見る鳳凰堂の姿は北側面・・・「イメージとしての平等院」には奥行き情報がないため、最初に北面を見ることで、ハッとさせられます。そこから池を時計回りに90度めぐったところが、皆が知る「ビューポイント」となります。これは建立当初から意図されたアプローチなのでしょうか・・・以前に記した「重森三玲庭園美術館」も同じような順路となっていることから、少し調べを進めてみたくなるものでした。

 もうひとつが鳳凰堂の「ドライさ」・・・博覧会におけるパヴィリオン建築と同じ類の雰囲気・・・この感覚は、おそらく時間・空間の連続性が棚上げされたことで発生したものでしょう。鳳凰堂の周囲に池を配することによって「極楽浄土と現世」という対比が設定され、「有限の生命」を持つ樹木や鑑賞者は「現世サイド」に限定されているのです。この手法・・・パーマネントな建築空間としては相当な「特殊解」です。ドライな中に学ぶべきものを見出しました。


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 宇治の平等院、栂尾の高山寺・・・とも歴史的に貴重なエリアとして世界遺産に登録されているもの・・・建築物だけでなく、その地の環境・歴史・文化を通じて賞賛されているのです。住宅も同じ・・・建物だけでなく、周辺環境、住まい手の歴史・文化がシンクロして素晴らしいものになるのです。



 これにて2009年は締めくくり・・・2010年も当ブログを宜しくお願いします。
少しだけ期待してくださいね(笑)。


(文:久保田正一




■参考URL
平等院 http://www.byodoin.or.jp/
Spice of Life 京の街角 http://easykyoto.jp/archives/5857
木と建築の旅 http://mirai-wood-archi.at.webry.info/200912/article_10.html
行かなくちゃ!京都 http://4travel.jp/traveler/tottokoyuri/album/10409002/
留学日記 http://blogs.yahoo.co.jp/tomiken_dawan/58871277.html
beadslab_log http://beadslab.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/121-347a.html
今日の出来事 http://blog.goo.ne.jp/yanagios/e/e18b61678ecc846e77d587d469ada5fc
歴史の小径 http://sewaiomiki-hagoromo.blog.so-net.ne.jp/2009-06-24
yukimi's blog http://pub.ne.jp/yukimi/?entry_id=2601642
散策とグルメの記録 http://seiyo39.exblog.jp/12590837/
ど根性作家 みやざきあゆみのカラーブログ http://dokonjyo.tenkomori.tv/e142703.html



今回も お読みいただき ありがとうございました。


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