平等院ミュージアム鳳翔館


 あっという間に2010年も走り出し・・・遅ればせながらですが、今年もよろしくお願い申し上げます。

 さっそく本題に・・・昨年の続編として、今回は「平等院ミュージアム鳳翔館」を中心に記しましょう。鳳凰堂と隣接する鳳翔館・・・この施設が完成したのは2001年のこと・・・それまでの宝物館にかわって、先端設備を導入しつつ収蔵環境の改善を施した美術館として新しく生まれ変わったものです。計画は建築家 栗生 明(くりゅう あきら)氏とランドスケープデザイナー 宮城 俊作(みやぎ しゅんさく)氏の「タッグチーム」によって進められました。お二人は「植村直己冒険館兵庫県)」や「岡崎市美術館(愛知県)」などで「競演」しており、その素晴らしさは広く知られています。

 特徴は「大地に謙虚なる立ち振る舞い・・深く心に残る空間体験」・・・鳳翔館を含んだ この3つの施設は、その規模に比してアプローチの主張が控えめな点が共通しています。これがかえった入館時の「ドキドキ感」を生んでいます。威厳を誇る「かまえ」の大きい建物が多い中、この姿勢は特徴的です。なかでも、ここ鳳翔館は隣に歴史的建造物「鳳凰堂」が建っているのですから、心配りある主張が必須・・・しかしながら、単に控えめというだけではありません。実は、このアプローチ空間の中心線は鳳凰堂の翼廊二層屋根の頂部に一致しているのです。「規則ある美しさ」ですね。

 敷地の高低差を生かし、施設の大半が地下にあります。そして、来訪者は「入口は地階→出口は1階」という動線設定のもと展示空間を進みます。地下に建築のウェイトを置くという思考は、光と温度・湿度を一定に保つ必要がある収蔵空間を有する美術館にフィットしたものでもあるのです。訪問者は暗い空間から上昇・・・光を巧みにコントロールした空間構成も見事です。

 そして、出口で待ち受けるのが美しい庭園・・・アルミパネルへの映り込み、ガラスウォールの透過により、歴史を現代に投影したかのごとき情景によってクライマックスを迎えます。見る者の心理を十分に考慮した順路性・・・建築が回遊式庭園の一部として見事に組み込まれていることを皆が認識する瞬間です。刹那と永遠が交差する平等院鳳凰堂と鳳翔館・・・多くの事象を脳裏に焼きつけることができた空間でした。

(文:久保田正一


■参考URL

平等院鳳翔館 http://www.byodoin.or.jp/tanbou-in-muesium.html
植村直己冒険館 http://www3.city.toyooka.lg.jp/boukenkan/index.html
岡崎市美術館 http://www.city.okazaki.aichi.jp/museum/bihaku/top.html
栗生明+栗生明総合計画事務所(建築)  http://kuryu.com
設計組織プレイスメディア(ランドスケープデザイン) http://www.placemedia.net




宇治平等院京都府宇治市宇治蓮華116


今回も お読みいただき ありがとうございました。


なかのひと