建築デザイナーは理系か? 文系か?


 秋も深まり、いよいよ大学受験シーズン到来・・・昔を思い出し、なぜか緊張してしまう私です(笑)。静岡の高校に通いながら京都行きを決めたのが、ちょうど25年前の秋でした。涼しくなって頭脳が冷静に稼動し始めるのでしょうね。我ながら良い時期に判断したなと思う一方、「あれから1/4世紀!」という事実に汗が・・・(笑)。当時、私が選んだ大学受験のベクトルは京都大学工学部建築学科です。工学部というと理系ですね。数学や物理を勉強していました。ですが、当時の難問が いま 解けるかと言えば、それはさておき(笑)・・・。



 今日は朝8時に現場へ行きました。サンプルを運んだだけですが、これも大切な仕事です。建築 = 特に住宅計画では、クライアント(お客様)との確認作業が最重要です。文書・図面・模型によってプレゼンテーション資料を作り、現場で位置・大きさ・見本を確認し、合意のもとで施工する・・・このステップを踏まない限り、現場は動きません。


 このようなコミュニケーションの醸成が職務の過半を占める建築デザイナーですが、やればやるほど「工学部というより・・・かなり文系的・・・」という思うようになります。高校時代に得意だった物理、数学の出番が少ないのです。


 この事実に初めて気づいたのが大学時代でした。建築デザイン系の人々との交流を深めてゆくと、芸術大学、デザイン系専門学校の方に会うようになります。彼らは明らかに「文系」として建築・デザインを選択しています。


 もちろん、電気・空調・換気・給排水衛生・構造など理系の知識なくして「建築」は成立しない事は、私を含め文系出身の方も知っています。ただ、そのエンジニア的な知識だけで成立しえないのも「建築」なのです。デザインの意図を言葉や図・絵に表現する還元的行為に基づき、クライアントと意思を共鳴させる・・・これが基本です。ここには理系も文系もありません。進路を二分する日本の受験システムとは合致しない総合的なジャンルなのです。我々は、この「二分割のパラドックス」を一級建築士などの国家試験受験の際に体感する事になります。高い高いハードルですが、でも、何とかクリアしてきました。



 さて、秋の夜長・・・文庫本でも読みましょうか・・・文系目指して(笑)。


■追記■
 このコラムを作成し始めた昨晩、富山県立高岡南高校のニュース(履修単位不足)を耳にしました(朝日新聞毎日新聞産経新聞読売新聞yahoo1yahoo2)。多くのブログでも語られています。皆さん予想外の事だったのではないでしょうか。


 単純には言い切れないのですが、この「単位履修不足」は、やはり教育システムに浅からぬ原因があると感じます。様々な方々の 色々な意図があって、受験勉強を合理的に進めようという施策がとられたものと想像されますが、やはり先の人生を考えると、必要な授業は全て履修しておくべきです。高校3年の時点で「理系」を選択した私も、日本史と世界史を履修していた事で大学では建築史研究室に進む事ができました。それが今の私を支えていると素直に思えるゆえ、母校に恩義を感じます。また、建築デザイナーには歴史の知識が不可欠です。「先達との距離感を知らずしてオリジナルを語るなかれ・・・作るなかれ」・・・。浅学非才・・・毎日が勉強の私です(笑)。

■写真上:「赤本」 自分が一生見ない書物が世の中に存在するのを知る瞬間(笑)。
 京都の古本屋さんでもよく見かけました。
 ちなみに・・・アマゾン (amazon) でも古本を取り扱うようになったようです。
 (「かぴぱら堂業務日誌」さんより)


■写真下:コミュニケーションを通じて創られる白い空間 「エッジを持つ住宅



(文:久保田正一



  今回も お読みいただき ありがとうございました